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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

義父の挑戦

士波 詮

 

 私の義父は、事業承継した数年後から今日まで、蜂を飼育していた。
 義父曰く、「我国の固有種、日本蜜蜂を飼育すれば、美味い蜂蜜が採れる」らしい。何日かの講習で習得したのか、出来上がった巣箱を見せて、「さぁ、これから設置に行くぞ!」と、張り切っていた姿が、今でも目に焼き付いている。
 義父の家の周囲は、山が連なり、その中に、ポカッと畑が垣間見える程度。手製の巣箱を付近を飛んでいる蜂は利用してくれるであろうと、誰もが思っていた。
 1年目は、3ヶ所共に蜂の出入りがなく、ために蜂蜜も採れないという結果に終わった。
 「設置場所に難がある。場所を変更しよう!」と、また駆り出された。2度目に箱を設置した場所は、初回より更に山奥。漆の木の傍に持って行った箱もあった。箱にも独自の細工をしたためか、初回よりも、意気込みが違った。
 そして1年の月日が過ぎた。やはり2年目も蜂が巣箱を利用する時はなかった。無論、蜂蜜の収穫もゼロである。
 「いや、来年は美味い蜂蜜が食べられるぞ!」との義父の意気込みに「買った方が良いのでは?」との喉まで出掛かった言葉を引っ込める。
 3年目。もう一度、講習会に参加した義父は、今度は日本蜜蜂そのものを数匹購入。強硬に巣箱に入れて、群れを作り、蜂蜜が滲み出て来るのを待つ作戦に切り替えたという。
 結果は、直ぐに出た。手製の角張った巣箱に、多くの蜜蜂が出入りする光景が、遠目からも見て取れた。3ヶ所の巣箱の内、2ヶ所の巣箱から、毎日のように蜂蜜が採れ続けたと聞く。
 無論、我家にも無料で大瓶2本分の蜂蜜が配られた。コーヒーや紅茶を飲む際にも、砂糖から蜂蜜に変化したことは言うまでもない。息子も娘も、諸手を挙げて喜んでいた。私自身、日本蜜蜂の蜂蜜を作る高い能力に感激したものだった。
 だが、冬に差し掛かり、件の巣箱の様子を見に行くと、蜂が一匹も見られない。不審に思い、息子を使って問い質してみると、巣箱に寒風が入り込む点を懸念して、寒い日等に火を使用して暖を取った所、一匹も蜜蜂が居なくなったとのこと。要は、巣箱の中の蜜蜂も炙って殺してしまったことを暗に示していた。
 余りの蜜蜂、愛に、周りで話を聞いていた義母や妻等は呆れ返っていた。
 だが、多分、今年も新たに蜜蜂を買い入れて、蜂蜜作りに挑戦するだろう。少々、お金が掛かっても、義父の数ある趣味の中でも、ほぼトップに君臨する趣味、蜂蜜づくりは、絶対に諦める時は来ないと私は考える。

 

(完)

 

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